花の溢れる幸福なダストボックス

2018.02.28 Wed 調律師

巧みな調律師がいて、音が呆けるとよく合わせてもらっていた、
けれどわたくしはピアノではない。
一人で動けるし、観劇も出来る、砂埃を吸い込んだら吐きだす、
さほど意味のないことばの国で水遊びをする。もっと遠くで息が出来る。

きっと失うだろうからと微笑んでいないのは愚かだ、けれど生きている速さが違うのだろう、見せかけの。
見せ掛け、
張りぼての国を燃やす。渡航。

2018.02.23 Fri "E poi la nave appare."

受け入れることを、
「愛する」と言う男性と「愛される」と表現する女性とがいて、決して譲らない。
蔦のように絡み合い、解け、離れる、ことばが。言葉が再び出逢う、それを通して立ち現れるわたくしたちが。
どんな風に重なっても良いのだった、勿論、手が食べ物を千切るようにも、熱い液体が体を流れるのを見詰めていても良かった、
それはどのように取り扱い枠組みを与えることも可能な事象の束、
「i nomi che mi dava al suo venire あの人と会った時に呼んでくれた名前」
あの人たちが来て、わたくしに与えた概念
いっそう蠱惑的に思える振る舞いを選び取ることで、構築されゆく概念を集めた世界が一瞬目に映る。ある晴れた日に。

2018.02.11 Sun Marienbad

それはひどく泣いたが、どうしてか。
教員に問題提起をされる、答えが見えない、わたくしの吐く煙で視界が白く濁る。
いつだって機嫌がいい、
石の上に立っている、浅いけれど冷たい水の流れる河に置いてある石、
異なる石に移らなくては景色が変わらない。河を歩いてもいい、靴が濡れる、靴下が冷たくなる、足指が凍る。
足の指、
ひどく拘っている。純化されたもの、雑ざっていないもの、瞬間的な精神のいとなみに。
まだ文章化できない、
まだ一つこととして綴じることができない。ふるえる光。

2018.02.05 Mon 全ての窓に鍵を

どこにでも行ける、ひとりで死ねる、誰とでも飛べる、
愛情がなくても、都合がよくても。何であっても、嘘さえついていなければ生きていられる。

もう少し違う物の見方がしたい、
いっそう閉じながら熱く溶けた核心に形を与える。
潜水艦にオモチャを詰めて。

2018.02.01 Thu "sans être devenue blanche pour autant"

エロティックな仏文の人がトゥルニエの Pierrot ou Les secrets de la nuit の最後の所、
--- Comme je suis savoureuse! Vous aussi, mes chéris, goûtez, mangez la bonne Colombine! Mangez-moi!
を読み上げて、目線で問いかける。
素晴らしい読み手の前ではテクストは随分と拓かれることだと震えていた。
(そうして、キリストの血と肉。)

"Colombine a pris Colombine dans ses bras au risque de se brûler.
--- Comme je suis belle, comme je sens bon!
dit-elle."
コロンビーヌは、火傷するかもしれない、けれど自らの腕にコロンビーヌを抱いて、こう言ったのです、
何てわたしは美しいの、何てわたしはよい匂いがするのでしょう!

「食べなよ、美味しいわたしを。」
物語としては完璧で、その枠のなかに不幸せな人はいないのだろう。
だが熱く柔らかいコロンビーヌを作ったのは誰、
真っ白になれない筈はないのに。

過去の自然な改竄を厭うことは、もはや些末な動きなのだろうか。